相手の所在が分からない場合の登記手続[抹消登記]について①
不動産登記法70条の規定に基づく単独抹消<概要>
不動産登記の世界では、本人からの申請があって初めて登記簿が書き換えられることになりますので、登記簿の記載(つまり、登記の内容)を変更するためには、自ら申請することが必要となります。
そして、不動産登記法60条は、共同申請(登記権利者と登記義務者の両方からの申請)を原則としていますので、基本的な登記手続については、相手方と協力しながら登記手続を行うことになります。
しかし、時間の経過とともに相手方の所在が分からなくなることもあり、不動産登記法70条には、「登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消」に関する規定が置かれています。
70条1項および同2項は、「公示催告⇒除権決定」により、登記権利権者が単独で抹消登記申請をすることができる旨を規定し、70条3項は、抹消対象の登記が担保権(先取特権、質権、抵当権)である場合には、1項の特則として、当該担保権が消滅したことを証することを証明したうえで登記権利者が単独で抹消することを規定しています。
ここでいう「登記義務者の所在」とは、「住所または居所」よりも広い意味であり、住所または居所を知らなくても「勤務先等」が判明しているのであれば、「所在が知れない」とはいえません。
また「知れない」とは、登記権利者において少なくとも登記義務者が登記記録上の住所に所在するかどうかの調査をしてもなお不明である状態を指します。
次回以降、「相手方の所在が知れない場合の抹消登記」手続についてまとめてみたいと思います。