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相手の所在が分からない場合の登記手続[抹消登記]について②

公示催告からの除権決定による抹消<不動産登記法70条1項・2項>

今日は、前回の続きです。
不動産登記は登記権利者(例:住宅ローンを完済した人)と登記義務者(例:住宅ローンを貸した金融機関)の共同申請によることが原則とされていますが、登記義務者の所在が知れない場合はどうするのでしょうか?
不動産登記手続において、その場合の対応は70条に規定があります。
まずは、『公示催告』という手続を行い、『除権決定』を取得することによる単独抹消手続についてまとめてみます。
公示催告手続は、非訟事件手続法99条以下に規定されている手続です。この制度を利用する場合、「所在が知れない相手方の住所地」または「抹消を求める権利の目的物の所在地」の簡易裁判所に公示催告手続の申立てを行います(非訟事件手続100条)。
公示催告の申立てが適法であり、かつ、理由があると認められるときは、裁判所は、「公示催告手続開始の決定」および一定の事項を定めて「公示催告をする旨の決定」をしなければなりません(非訟事件手続101条)が、これらを証明するのはすべて登記権利者である申立人となりますので、相当な証拠がないことには中々認めてもらえないのが実情です。
公示催告手続は、「裁判所の掲示場」に公示催告の内容を掲示し、かつ、「官報に掲載する方法により公告」することになり、その期間は2か月以上必要です。
裁判所は、権利の届出の終期までに適法な権利の届出または権利を争う旨の申述がないときは、原則として、公示催告の申立てに係る権利につき失権の効力が生ずる旨の裁判(=除権決定)をすることになります(非訟事件手続106条1項)。
除権決定後は、官報に掲載して公告しなければならず(非訟事件手続107条)、これにて公示催告手続は終了となります。
除権決定後、当該除権決定を登記申請書に添付して登記権利者による抹消登記申請を行うことになりますが、除権決定には、既判力(世間一般に主張できる効力)がないとされていますので、抹消登記後においても抹消された登記の回復を申請することができます。
次回は、担保権だけに認められた特則についてまとめてみたいと思います。

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